私たちが普段聞いている音楽や動画の音声は、コンピュータの中ではデジタルデータとして保存されています。
しかし、空気の振動として伝わる音は本来連続的に変化するアナログデータです。
このアナログの音をコンピュータで扱うためには、一定の手順によってデジタルデータへ変換する必要があります。
情報Ⅰ(情報1)では、音をアナログからデジタルに変換してデジタルとして表現することを学びます。本記事では、音のデジタル表現について解説します。
音の波形と音の要素との関係

上の図に示すように、音は空気の振動によるアナログデータです。
- 音の大きさ → 振幅
- 音の高さ → 周波数
- 音色 → 波形
これら3つをまとめて音の三要素と呼びます。
振幅が大きいほど、音は大きくなります。図のaは振幅を表しています。図の(2)は図の(1)よりも振幅が小さいです。従って、(2)は(1)よりも音が小さいです。
周波数が高いほど音は高くなります。周波数が高いほど周期は短いので、周期が短いほど音は高くなります。図のTは周期を表しています。図の(3)は図の(1)よりも周期が短いです。従って、(3)は(1)よりも音が高いです。
音のデジタル化とは
音のデジタル化とは、連続的に変化する音の波形を、コンピュータで扱える数値データの列に変換することです。
音は空気の振動であり、時間とともに連続的に変化する波として表されます。
このような連続的な情報をアナログ情報(アナログデータ)といいます。
一方、コンピュータが扱う情報は0と1の組み合わせで表されるデジタル情報(デジタルデータ)です。
そのため、音をコンピュータで保存したり処理したりするためには、アナログ情報をデジタル情報へ変換する必要があります。
この変換を行う装置や処理をA/D変換(アナログ・デジタル変換)といいます。
逆に、デジタルデータをスピーカーなどで再生できる音へ戻す処理をD/A変換(デジタル・アナログ変換)といいます。
音のデジタル化の三つの過程
音のデジタル化は、次の三つの段階で行われます。
- 標本化
- 量子化
- 符号化

標本化
標本化とは、一定の時間間隔で音の波形の値(波の高さ)を取り出す処理です。
音の波形は連続的に変化していますが、一定の間隔で値を取り出すことで、離散的なデータ列として扱えるようになります。
量子化
量子化とは、標本化によって得られた値をあらかじめ決められた段階値に丸める処理です。
実際の音の振幅は連続値ですが、コンピュータでは有限の数の値しか扱えないため、最も近い段階の値に変換します。
符号化
符号化とは、量子化された値を2進数(0と1のデータ)として表す処理です。
この処理によって、コンピュータが扱えるデジタルデータになります。
標本化周期と標本化周波数
標本化では、どのくらいの間隔で音を取り出すかが重要になります。
ここで登場するのが標本化周期と標本化周波数です。
標本化周期とは

標本化周期とは、標本化を行う時間間隔のことです。
例えば、0.001秒ごとに音の値を取り出す場合、標本化周期は、0.001秒となります。
標本化周波数とは
標本化周波数とは、1秒間に何回標本化するかを表す値です。
単位はHz(ヘルツ)です。
例えば、1秒間に1000回標本化する場合、標本化周波数 = 1000 Hzとなります。
標本化周波数はサンプリング周波数やサンプリングレートとも呼ばれます。
標本化周期と標本化周波数の関係
標本化周期と標本化周波数は、次の関係があります。
標本化周波数 = 1 ÷ 標本化周期
例えば、標本化周期 = 0.001秒の場合、標本化周波数 = 1 ÷ 0.001 = 1000 Hzになります。
つまり、
- 標本化周期が短いほど標本化周波数は大きくなる
- 標本化周期が長いほど標本化周波数は小さくなる
という関係になります。
標本化定理と音の再現
標本化定理(サンプリング定理)は、アナログ信号を正しくデジタル化するための条件を示したものです。

上の図のように、標本化周期を元の周期の1/4とすると、標本化された点から元の波形を復元できる気がします(正弦波であれば)。

上の図のように、標本化周期を元の周期と一致させた場合、標本化された点から元の波形を復元することはできません。このように、標本化周期は、元の波形をどの程度の精度で復元できるかを決める重要な値になります。
標本化定理とは、信号をデジタル化するとき、元の信号の変化を十分に表せる間隔で標本化すれば、標本化したデータから元の信号を正しく再現できるという原理です。
標本化定理では、次のように説明されます。
信号に含まれる最大周波数の2倍以上の標本化周波数で標本化すれば、元の信号を再現できる。
例えば、最大周波数が20000Hzの音を正しく再現するためには、40000Hz以上の標本化周波数が必要になります。
CDの音声で使われている44.1kHzという値は、この条件を満たすように設定されています。
もし標本化周波数が低すぎると、元の音を正しく再現できず、異なる周波数の音として現れる現象(折り返しひずみ)が発生します。
量子化ビット数と音の細かさ
量子化では、音の振幅をいくつの段階で表すかを決めます。
この段階の数を決めるのが量子化ビット数です。
例えば、
- 8ビット → 256段階
- 16ビット → 65536段階
となります。
量子化ビット数が大きいほど、
- 音の強弱をより細かく表現できる
- 元の音に近いデータになる
という特徴があります。
身近な音声データの例
身近な音声データとしてよく知られているのが音楽CDです。
CDの音声データでは次のような設定が使われています。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 標本化周波数 | 44.1 kHz |
| 量子化ビット数 | 16 bit |
| チャンネル数 | 2(ステレオ) |
このような設定により、人が聞き取れる範囲の音を高い品質で記録することができます。
学習時の注意点
情報Ⅰの学習では、次の点を混同しないことが重要です。
- 標本化周波数
1秒間に何回標本化するか - 標本化周期
標本化する時間間隔
また、
- 量子化
振幅を段階的な値に丸める処理 - 符号化
2進数のデータに変換する処理
という違いも整理して覚えておく必要があります。
確認問題
【問題1】一定の時間間隔で音の波形の値を取り出す処理を何というか。
【問題2】量子化された値を2進数として表す処理を何というか。
【問題3】標本化周期が 0.001秒 のとき、標本化周波数は何Hzか。
【問題4】最大周波数が 10kHz の信号を正しく再現するために必要な最小の標本化周波数は何Hzか。
答え:【問題1】標本化 【問題2】符号化 【問題3】1000Hz 【問題4】20000Hz以上
まとめ
音のデジタル化は、アナログの音の波形をコンピュータで扱えるデータへ変換する処理です。
その過程は次の三つの段階で行われます。
- 標本化
- 量子化
- 符号化
標本化では一定の間隔で音を取り出し、その間隔を標本化周期といいます。
また、1秒間に行う標本化の回数を標本化周波数(サンプリング周波数)といいます。
さらに、元の音を正しく再現するためには、最大周波数の2倍以上の標本化周波数が必要であり、これを標本化定理といいます。
これらの関係は情報Ⅰや共通テストでもよく問われるため、定義と関係を整理して理解しておくことが重要です。
