現代の情報社会では、誰もが情報の受信者であると同時に発信者でもあります。
インターネットやSNSの普及により、個人の発信が瞬時に広がる環境が整いました。
そのため、情報を正しく理解し、責任をもって行動する力が必要です。
高等学校「情報Ⅰ」では、情報社会に主体的に参画する態度の育成が重視されています。
その基盤となるのが情報モラルです。
情報モラルの定義
情報モラルとは、情報社会で適切に行動するための考え方や態度のことです。
単なるマナーではなく、社会的規範や法令を理解し、他者の権利を尊重して判断し行動する姿勢を指します。
情報社会の特性を理解し、被害者にも加害者にもならない行動を選択することが重要です。
情報モラルの5分類
文部科学省では、情報モラルを次の5つの領域で整理しています。
① 情報社会の倫理
情報社会において望ましい心構えや態度を身に付けることです。
他者を尊重し、誹謗中傷や差別的発言を行わないことが含まれます。
匿名性がある環境でも、現実社会と同様に責任ある行動が求められます。
② 法の理解と遵守
情報に関わる法律を理解し、違反しない行動をとることです。
著作権法や個人情報保護法などを正しく理解することが必要です。
法律を知らなかったという理由では責任を免れません。
③ 安全への知恵
情報社会で起こり得る危険を予測し、被害を未然に防ぐ判断力を持つことです。
例えば、見知らぬ相手との安易なやり取りを避けることや、個人情報を安易に公開しないことが挙げられます。
被害者にも加害者にもならないための知恵が重要です。
④ 情報セキュリティ
技術的な対策を講じて情報を守ることです。
強固なパスワードの設定、ウイルス対策ソフトの利用、二要素認証の活用などが含まれます。
安全への知恵と異なり、具体的な技術的対策を実行する点が特徴です。
⑤ 公共的なネットワーク社会の構築
情報社会の一員として、よりよい社会を築く責任を自覚することです。
正確な情報の発信や、建設的な議論への参加などが求められます。
自分の行動が社会全体に影響を与える可能性を理解することが重要です。
情報モラルと法制度
主な関連法規
情報モラルと関係する主な法律には、次のものがあります。
- 個人情報保護法
- 著作権法
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律
- プロバイダ責任制限法
- ストーカー行為等の規制等に関する法律
- 出会い系サイト規制法
- いじめ防止対策推進法
- 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
- 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律
これらは、国が制定した法律です。
条例によるトラブル防止の取組
情報社会における問題の中には、地域の実情に応じた対応が必要なものもあります。
そのため、都道府県や市町村では、条例を制定してトラブルの防止を図っています。
例えば、
- 青少年保護育成条例による有害情報対策
- 迷惑行為防止条例によるつきまとい行為の規制
- 個人情報保護条例による自治体独自の管理規定
などがあります。
条例は、国の法律を補完し、地域の状況に応じた具体的な対策を定めるものです。
このように、法律だけでなく条例も含めて、社会全体で情報トラブルの防止が図られています。
法律制定の背景となった社会的出来事
法律は、社会的な出来事を背景にして定められることが多いです。
| 法律名 | 制定・改正の背景となった出来事 |
|---|---|
| 個人情報保護法 | 企業による大量の個人情報漏えい事件が社会問題となったこと |
| 不正アクセス行為の禁止等に関する法律 | バーミンガムサミットにおけるハイテク犯罪対策の議論 |
| プロバイダ責任制限法 | ハイテク犯罪に関する相談件数の増加 |
| 著作権法の改正 | 環太平洋パートナーシップ協定に署名 |
| ストーカー行為等の規制等に関する法律 | ストーカー行為の増加 |
| 出会い系サイト規制法 | 出会い系サイトを通じた事件の増加 |
| いじめ防止対策推進法 | いじめによる重大事態が社会問題となったこと |
| 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 | 私的画像の無断公開被害が深刻化したこと |
| 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律 | 犯罪被害児童の多くがフィルタリング未使用 |
情報モラルを身に付けるための学習の視点
情報モラルは、法律や条例の存在を理解した上で、具体的な場面で適切に判断する力を育てることが重要です。
知識と実践を結び付けることが、情報社会に主体的に参画するための基盤となります。
加害者にも被害者にもならないために、インターネットに関わる犯罪などに巻き込まれないように知恵をもつことが重要です。
普段からSNSなどでインターネットに触れる機会があると思いますが、そういった普段の生活から情報モラルを意識することが非常に重要です。
確認問題
【第1問】次の文が正しければ「○」、誤っていれば「×」を記載せよ。
1.情報モラルはインターネット上だけで必要な考え方である。
2.法律を知らなかった場合、責任を問われることはない。
3.強固なパスワードの設定は情報セキュリティに含まれる。
4.匿名であれば誹謗中傷をしても問題はない。
5.条例は国の法律よりも上位に位置する。
【第2問】次の事例を読み、問いに答えよ。
Aさんは、友人との写真をSNSに投稿しました。その写真には、友人の顔と学校名が写っていました。投稿後、その写真が第三者によって拡散され、友人が不快な思いをしました。
1.Aさんの行動にはどのような問題があったか説明せよ。
2.この事例は情報モラルのどの分類に関係するか答えよ。
3.同様のトラブルを防ぐために、どのような配慮が必要か具体的に述べよ。
答え:
【第1問】
1.×
2.×
3.○
4.×
5.×
【第2問】
1.問題点。
→ 友人の同意を得ずに顔や学校名が分かる写真を公開したことにより、個人情報の流出やプライバシー侵害の可能性を生じさせた点。
2.関係する分類。
→ 情報社会の倫理、法の理解と遵守、安全への知恵。
3.必要な配慮。
→ 投稿前に本人の同意を得ること、個人が特定できる情報を公開しないこと、公開範囲を適切に設定することなど。
まとめ
情報モラルは、倫理、法令遵守、安全確保、公共性など多面的な要素から成り立っています。
国の法律だけでなく、地方自治体の条例も含めて、社会全体で情報トラブルの防止が図られています。
これらを理解し、責任ある行動を実践することが、情報社会を生きる私たちに求められています。
